日本からインドの競馬を見ていて残念なことの一つが閉じた世界になっていること。今のところ国際招待レースも無いようですし。ただ海外挑戦が全く無い訳ではなく古くはオウンオピニオンがジャパンカップに出走したように時々海外への挑戦は存在します。最近の2頭、Desert GodとSerjeant At Armsの事例をまとめてみました。
Desert God
インドでは17戦して（12,2,2,1）、9戦目から9連勝でインドでの競争生活を終えました（→参照）。特筆すべきレースは12戦目のIndian Turf Invitation Cup (G1、2400m)。このレース時点でのDesert GodはCalcutta 2000 Guineas(G2)→Calcutta Derby (G1)→Indian Derby (G1)と3連勝で世代チャンピオンになったところ。対する最大の敵はシーキングザダイヤ産駒で古馬最強のQuasar（→参照）。こちらは6連勝でこのレースを迎えました。
レースは絵に描いたようなマッチレースとなり早めに先頭に立ったQuasarにDesert Godが並びかけ馬体を併せたままゴールイン。クビ差でDesert Godが勝利、レース数日後にQuasarが引退したこともあり美しい世代交代となりました。日本でなら少なくとも20年は語り継がれそうな伝説のレースです。ちなみにこのレースの3着はQuasarと同期の2冠馬Be Safe、4着はDesert Godと同期でBangalore Derby (G1)を制したウインレジェンド産駒のAngel Dustでした。
このレースの後、Desert Godはインドで5連勝。Quasarも引退した中では対抗できる馬もおらず、このままインドで稼いでも良かったのでしょうが海外へ矛先を向け2017年以降は海外で走っています。
ただ現状海外では苦戦続きです。ドバイでは2戦して7着、7着。その後活躍の場をイギリスに移して7戦。最高位は3着、今のところの最新のレース（2017/12/17）ではClass 4のレースに出ているようです。下は海外初戦のドバイのレース（5番の馬です）。
Serjeant At Arms
こちらはDesert Godの一つ下の世代でインドでは14戦して（12,2,0,0）、特に1600m以下のレースでは10戦10勝と完璧な成績を誇ります（→参照）。
この馬で語るべきはIndian Derby (G1)の次のレースにIndian Turf Invitation Cup (G1)でなくSuper Mile Cup (G1)を選んだところにあると思います。この馬はSuper Mile Cupまでに2000m戦で1回、2400m戦で1回2着に負けてますがいずれも逃げ切りを許した形になっています。短距離ほど直線で伸びきれないことを陣営も感じたのでしょう。
レースは2400m戦直後の1600m戦ということもあってか道中はいつもより後ろの位置取り。直線に入るとワープしたかのような加速で一気に先頭に並び、そこでムチを入れて後続を置き去り、5 1/2差の圧勝。古馬初対戦も問題にしませんでした。
その後は1400～1600mのレースを4戦して4勝。2着の馬より毎回8kgほど斤量背負ってますがいずれも完勝。ただ完勝すぎて同じような相手と対戦し続けるDesert Godと同じ環境になっていたので今回の海外挑戦は大歓迎です。
こちらの移籍先はアメリカ。グラハム・モーション厩舎に所属しているようです。最新の情報によると1ヶ月ほど後にマイルあたりの重賞に出走する予定のようです。
問題はDesert Godが通用していない現状においてSerjeant At Armsが通用するのか、という事です。普通に考えれば厳しいでしょうがDesert Godより多少有利に思える点はあります。
- 距離 Desert Godが2200～3200mのレースを使っているのに対しこちらは短距離志向である
- 格 調教パートナーがRing Weekendでなお重賞を目指すということは通用する見込みがあると判断してると思われる
- 脚質 いわゆる「手応え詐欺」タイプで、同タイプのトゥザヴィクトリーがドバイやフェブラリーSでも特色を発揮したようにこの馬も異なる環境でも持ち味を出してくれそうな気がする。下は持ち味がよく出たIndian 2000 Guineas (G1)の映像です。
この先インド競馬が国際化に積極的になるかどうかわかりませんが、オウンオピニオン以来の日本挑戦を楽しみにしつつこの2頭の挑戦も見守りたいと思います。
